交通事故の診断書を警察に提出し忘れた!治療費に影響はあるのか?
交通事故が起きた際、軽い事故であった場合は病院に行かずそのまま家に帰る方もいます。
警察に「念のため病院に行き、診断書を提出してください」と言われていたが、忙しくてなかなかできず、2、3日経って痛みが出てきた。
そのようなケースもよくあることです。
痛みが生じたら、すぐにでも病院へ行ってください。そして、医者に診断書を書いてもらい、警察に提出しましょう。警察に提出しないと、治療費が受け取れなくなるなどの不利益が発生してしまいます。
今回は、交通事故における診断書の役割や診断書を提出しなかったらどのような不利益が起きるのかについて解説いたします。
このコラムの目次
1.交通事故の診断書
まずは、交通事故における診断書の役割について理解しておきましょう。内容や効果、後遺障害診断書との違い、診断書作成時の注意点も一緒にご説明します。
(1) 診断書の役割
診断書とは、怪我や病気の名前や症状などが記載されている証明書のようなものです。医師による診断結果が記載されており、公的機関に提出するものとしてよく利用されています。
皆さんは交通事故が起きた後、医師による診断書がなぜ必要なのかをご存知でしょうか?
実は、交通事故においては診断書が非常に重要です。というのも、診断書は交通事故による怪我であることや怪我の程度を証明するものであるからです。
大きな事故の場合、事故後すぐに病院に救急車で運ばれ治療を受けるため、事故による怪我であることは誰の目からみても明白であることが多いでしょう。
しかし、軽い事故の場合は、交通事故後数日経って痛みが発生することがあります。物損事故として扱ったのにも関わらず、後日痛みが生じてしまったパターンです。
このようなケースでは、医師による診断で「事故による症状」であることを証明しなければいけません。
時間が経過するほど、事故との因果関係は証明しにくくなってきます。そのため、医師による診断書は重要な証拠となるのです。
また、診断内容も重要です。病名や状態などから治療期間などもある程度推測でき、後遺障害となってしまった場合の等級まである程度想定することができます。
(2) 後遺障害診断書との違い
では、後遺障害診断書とは何が異なるのでしょうか。
診断書の中には、事故後すぐに作成してもらう診断書と、症状固定となった段階で作成してもらう後遺障害診断書の2つがあります。
通常の診断書は、事後後の怪我の内容を証明するものとご説明しました。他方、後遺障害診断書は、後遺障害の内容を証明するための診断書です。
ちなみに、後遺障害とは、いわゆる後遺症と似たものです。事故により治療したが完治しなかった場合を指します。後遺症と違うのは、後遺障害認定の等級にあたる怪我があると認められているかどうかです。
後遺障害診断書は、この後遺障害認定等級の申請の際に必要となります。
通常の診断書は事故後すぐに書いてもらうものであり、後遺障害診断書は症状固定時にかいてもらうものと理解しておけばよいでしょう。
このように、後遺障害診断書は事故後すぐに作成してもらうべき診断書とは別物です。
(3) 診断書作成時の注意点
軽症の事故であった場合、病院ではなく整骨院などで診てもらうということもあるでしょう。「病院で診てもらうほどのことでもない」と思っている方も多いかと思います。
しかし、交通事故に関していえば、最初は必ず医師のいる整形外科か総合病院に行くようにしてください。なぜなら、整骨院の先生は、診断書が書ける医師ではないからです。
先ほどもご説明した通り、診断書は事故後の怪我の状態を警察などの機関に証明するためにも必要です。どれだけ軽い怪我であったとしても、整形外科か総合病院で診断を受けるようにしてください。怪我の状態が安定してから、医師の同意を得た上で整骨院などでも治療をうけるようにしましょう。
また、診断書には、「むち打ち」といったような怪我の名前だけでなく、治療にかかる日数、医師の名前、病院名などが記載されます。これに加えて、注意すべきは書いて欲しいことを伝えることです。
例えば、むち打ちの状態が悪く働ける状態ではないことが想定できます。このようなケースでは、「就労ができない状態である旨」を必ず書いてもらいます。
怪我の影響で今現在困っていることを医師に説明し、診断書に書いてもらうことが大切です。
2.診断書を警察に提出しなかったらどうなる?
次に、警察への診断書の提出期限と提出できなかった場合にどうなってしまうのかをご説明致します。
(1) 診断書の提出期限と費用
「診断書はいつまでに提出したら良いのですか?」
人身事故の場合、警察に事故の診断書を提出する必要があります。人身事故とは、怪我人が出た場合の事故を指します。
治療が必要である人身として申請するためには、怪我があったことを証明するため医師の診断書が必要になります。
ちなみに、負傷者が出ていない事故は物損事故として取り扱われますが、治療費や慰謝料は補償されません。
診断書の提出期限ですが、これは基本的に設けられていないようです。
もっとも、軽い事故であった場合で、物損事故として処理してしまった場合は、できるだけ早く診断書を提出すべきでしょう。事故との因果関係を疑われ、提出を受け付けてくれないケースもあります。
実際に、「事故から1ヶ月後に人身事故に切り替えようとした」というケースでは、切り替えが拒否されてしまったというのもあります。「治療費を詐取するためではないか?」と警察に疑われてしまうことがあるのかもしれません。
そのため、診断書は事故から2,3日で提出するのがベストといわれています。遅くとも1週間以内には、警察に診断書を提出することをおすすめします。
ちなみに、診断書を医師に作成してもらうには費用がかかります。各病院によってことなりますが、3000円〜5000円程度が一般的です。
診断書費用についても後で加害者側の任意保険会社に請求できるので、病院発行の領収書は捨てないようにしましょう。
(2) 診断書を警察に提出し忘れた場合
「診断書を警察に提出しませんでした。どうなりますか?」
まず、体のどこにも痛みがない場合は、物損事故として処理されそのまま車の修理費等が請求できるため、問題ありません。
しかし、物損事故として処理した後に、体に痛みが生じ、治療が必要になった場合は人身事故に切り替えなければいけません。これには診断書が必要であり、診断書を提出しなければ人身事故扱いとなりません。つまり、「治療費が加害者に請求できない」ということになるのです。
加害者が任意保険会社の保険に加入していた場合、治療費を請求する場合は任意保険会社の担当者とやりとりをすることになります。
「痛みが出てきたので修理費だけでなく治療費や慰謝料も請求したい」と説明すると、「人身事故に切り替えてください」という説明があるでしょう。そのため、治療費等を請求するためには、医師の診断書を必ず警察に届けなければいけません。
時間が経過しすぎているため、人身事故として切り替えることができなかった場合には、人身事故証明書入手不能理由書というものを提出すれば、保険会社から治療費などを受け取れる可能性があります。保険会社の担当者に詳しい事情を聞いてみましょう。
3.警察以外に診断書を提出すべき場所
医師の診断書は、事故後の怪我の状態を把握するためには必須の書類です。一種の証明書としても機能するため、警察以外にも提出すべき機関があります。
それは、自賠責保険と加害者側の任意保険会社です。
警察に提出するのは人身事故に切り替えるためですが、自賠責保険と任意保険会社に提出するのは、治療費や慰謝料を受け取るためです。
自賠責保険と任意保険会社についても、警察と同じく提出期限などはありません。ですが、できる限り早めに提出することで事故後の手続きがスムーズに進んでいきます。そのため、事故から2、3日、遅くとも1週間以内には提出するようにしましょう。
4.診断書の内容に納得できない場合は?
「医師の診断内容に納得できません。どうしたらいいですか?」
医師の執筆する診断書は、ご自身で確認することができます。内容に記載漏れがないかは必ず確認するようにしてください。念のため、コピーを取っておくのも良いでしょう。
診断書を作成後に、「納得できない内容だった」というケースもあるかもしれません。この場合は、担当医師になぜこのような診断書なのか説明を求め、可能な限りで書き直しをしてもらいましょう。担当医師に相談することで解決することもあります。
また、セカンドオピニオンを受けるという方法もあります。
各機関に提出した後であった場合は、再提出ができる場合もあります。被害者が任意保険会社に掛け合っても相手にしてもらえないケースもありますので、上手く取り合ってくれない場合は弁護士にご相談ください。交渉すれば再提出が認めてもらえる場合もあります。
5.人身事故への切り替えも弁護士に相談を
医師に診断書を作成してもらったものの、人身事故への切り替えが上手くいかないというケースもあるでしょう。そのような事態になってしまった場合には、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。
任意保険会社との交渉で、人身事故扱いとしてもらえる可能性もあります。
また、医師の診断内容に納得できない方もいらっしゃるでしょう。このような場合は、被害者に好意的な診断書を書いてくれる医師を見つけることも重要です。セカンドオピニオンを受け、納得のいく診断書を書いてもらいましょう。
泉総合法律事務所は、数多くの交通事故案件をサポートしています。実際の状況をお聞きして、きめ細やかな対応をしております。
ご希望に添えるよう全力を尽くしますので、交通事故の診断書でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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