障害の種類別|足・足指の後遺障害等級と損害賠償金額のまとめ
交通事故で足や足の指が欠損してしまった・動かなくなってしまった・変形してしまった・短くなってしまったときは、治療費とは別に追加で損害賠償請求できることがあります。
そのためには、後遺障害等級認定手続で後遺障害の等級に当たると認定を受けることが必要です。
損害賠償金の中でも、後遺障害慰謝料と逸失利益は特に金額が大きくなりやすいものです。
後遺障害慰謝料の金額の目安や、逸失利益の計算で用いられる労働能力喪失率は、後遺障害の「等級」に応じて目安が決まっています。
ここでは、足や足の指にどのような後遺障害が残ったときにどの等級となるのか、後遺障害慰謝料と労働能力喪失率の目安はどれくらいの数字になるのかをまとめて解説します。
このコラムの目次
1.足の欠損障害
欠損障害とは、事故の怪我で足を切り離してしまったことです。
事故で直接足を失った場合だけでなく、怪我の治療のための手術でやむを得ず切り離したときも含みます。
下肢の欠損障害は、どこで足を切り離したかで場合分けされています。
- 股関節~ひざ関節
- ひざ関節より下~足首
- 足首から先~リスフラン関節
リスフラン関節とは、足の甲の途中にある関節です。ほとんど動きませんが、クッションの機能を持っています。
(1) 股関節~ひざ関節のケース
- 股関節において、寛骨(骨盤の骨)と大腿骨とを「離断」(関節で切り離すこと)したとき
- 股関節とひざ関節との間において「切断」(骨の途中で切り離すこと)したとき
- ひざ関節において、大腿骨(太ももの骨)と脛骨及び腓骨(ひざ下の2本の骨)とを離断したとき
上記は、「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とされます。
両足ともか、それとも片足だけかで等級が異なります。
下肢をひざ関節以上で失ったのは |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
両足 |
1級 |
1150万円 |
2800万円 |
100% |
片足 |
4級 |
737万円 |
1670万円 |
92% |
(2) ひざ関節より下~足首のケース
- ひざ関節と足関節との間で切断したとき
- 足関節において、脛骨及び腓骨と距骨(かかとの骨)とを離断したとき
上記は、「下肢を足関節以上で失ったとき」とされます。
こちらも両足かどうかで違いがあります。
下肢を足関節以上で失ったのは |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
両足 |
2級 |
998万円 |
2370万円 |
100% |
片足 |
5級 |
618万円 |
1400万円 |
79% |
(3) 足首から先~リスフラン関節のケース
- 足根骨(腓骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨。簡単に言えば足の甲を形作る骨)において切断したとき
- リスフラン関節において中足骨(足指の付け根から足の甲の中を伸びている骨)と足根骨とを離断したとき
上記は、「リスフラン関節以上で失ったとき」とされます。
下肢をリスフラン関節以上で失ったのは |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
両足 |
4級 |
737万円 |
1670万円 |
92% |
片足 |
7級 |
419万円 |
1000万円 |
56% |
(4) 足の指を失ったケース
「足指を失った」とは、足の指全体、具体的には足の付け根の関節である「中足指節関節」から先を失ったケースを言います。
足指の途中から先を失ったときは、その内容によっては機能障害となります。
足指の中でも親指は「第1の足指」と呼ばれ、認定基準の中で重要視されています。
等級 |
内容 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
5級 |
両足の足指の全部を失ったもの |
618万円 |
1400万円 |
79% |
8級 |
1足の足指の全部を失ったもの |
331万円 |
830万円 |
45% |
9級 |
1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの |
249万円 |
690万円 |
35% |
10級 |
1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの |
190万円 |
550万円 |
27% |
12級 |
1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の第3の足指を失ったもの |
94万円 |
290万円 |
14% |
13級 |
1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの |
57万円 |
180万円 |
9% |
2.足の機能障害
機能障害とは、関節が曲がり切らなくなったり、不安定になってしまったりしたために、体を支えるなど足の機能が損なわれてしまう障害です。
機能障害には、関節の動く範囲が制限される「関節の可動域制限」が生じたケース・人工関節や人工骨頭を入れたケース・動揺関節となってしまったケースなどがあります。
関節の可動域を測定する際には、怪我をしていない足(健側)と怪我をしている足(患側)、両方の「主要運動」の可動域を測定し比べることが原則となっています。
両足を怪我している場合は、制度上決められている参考可動域と呼ばれる角度と比べます。
股関節は主要運動が二組あります。
機能障害の認定では、障害の内容により、両方の可動域制限が基準を満たさなければいけないこともあれば、いずれか一方だけ基準を満たせばよいこともあります。
詳細は弁護士との相談の際にご確認ください。
また、股関節では主要運動の可動域制限が基準までわずかに足りない(10度以内)とき、参考運動が基準を満たしていれば認定を受けられるとされる等級があります。
(1) 「全廃」
股・ひざ・足首の関節、3つ全てが「強直(きょうちょく)」したとき、「下肢の用を全廃」したとして、両足なら1級、片足なら5級になります。
ここでいう「強直」とは、関節が全く動かなくなった・関節可動域が、基準となる角度の10%を5度単位で切り上げた角度以下・関節可動域が、10度以下などのケースを指します。
「5度単位で切り上げ」とは、たとえば、基準角度の10%が11度なら15度を基準にするということです。
この例で言えば、後遺症で動きにくくなった関節の可動域角度が12度~15度のケースも強直に含まれます。
用を全廃したのが |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
両足 |
1級 |
1150万円 |
2800万円 |
100% |
片足 |
5級 |
618万円 |
1400万円 |
79% |
(2) 「用を廃した」
関節のどれかが「用を廃した」ときは、用を廃した関節の数が2つなら5級、1つなら8級になります。
用を廃したというのは、「関節が強直したもの」「関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるも」「人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの」の3つを言います。
1下肢のうち用を廃した関節が |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
2つ |
6級 |
512万円 |
1180万円 |
67% |
1つ |
8級 |
331万円 |
830万円 |
45% |
(3) 「(著しい)支障が生じている」
関節のどれか一つでも、可動域制限が1/2以下ならば「関節の機能に著しい障害を残す」として10級に、4分の3以下のならば「関節の機能に障害を残す」として12級に認定されます。
また、人工関節、人工骨頭を挿入置換した関節のうち、関節可動域が2分の1以下ではないときも、「関節の機能に著しい障害を残す」として10級となります。
可動域 |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
1/2以下 |
10級 |
190万円 |
550万円 |
27% |
3/4以下 |
12級 |
94万円 |
290万円 |
14% |
(4) 動揺関節などについて
動くものの不安定になってしまった関節を動揺関節といいます。
動揺関節のために硬性補装具を使わなければ生活できないとき、後遺障害の認定を受けられる可能性があります。
等級は、基準の上では日常生活の中で硬性補装具を必要とする頻度に応じて決まっています。
硬性補装具を必要とする頻度 |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
常に |
8級 |
331万円 |
830万円 |
45% |
時々 |
10級 |
190万円 |
550万円 |
27% |
重激な労働等の際以外では不要 |
12級 |
94万円 |
290万円 |
14% |
なお、以下については、12級に認定される可能性があります。
- 習慣性脱臼:外部から軽い力を受けるだけで簡単に脱臼してしまう状態になっているケース
- 弾発ひざ:ひざ関節を伸ばすと、急にばねのように飛び跳ねてしまうケース
(5) 足指の機能障害
足指の機能障害については、足指が「用を廃した」ときに後遺障害等級認定を受けられます。
足指が「用を廃した」とは、簡単に言えば、指の大部分を失ったか、大きな関節の可動域が制限された場合です。
足指のどこを失ったか、基準を読み解くうえでは、足指の骨の名前を知る必要があります。
親指の骨は根元から順に基節骨、末節骨と呼ばれています。他の指には基節骨と末節骨の間に中節骨があります。
具体的には、以下のいずれかならば、「用を廃した」とされます。
- 親指については、末節骨の半分以上を失ったとき
- その他の足指については、中節骨もしくは基節骨を切断、または中節骨と末節骨をつなぐ遠位指節間関節で離断したとき
- 足指のいずれかについて、中足指節関節(足指の付け根の関節)または近位指節間関節(つま先に向かってもう一つ進んだ関節。親指では単に「指節間関節」といいます。)に著しい運動障害(可動域制限が2分の1以下)を残すとき
どの足指の用を廃したかで等級は細かく分かれています。
第1の足指とは親指のことです。
内容 |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
両足の足指の全部の用を廃したもの |
7級 |
419万円 |
1000万円 |
56% |
1足の足指の全部の用を廃したもの |
9級 |
249万円 |
690万円 |
35% |
1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
11級 |
136万円 |
420万円 |
20% |
1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
12級 |
94万円 |
290万円 |
14% |
1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
13級 |
57万円 |
180万円 |
9% |
1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
14級 |
32万円 |
110万円 |
5% |
3.足の変形障害
変形障害とは、骨折したあと、骨が元通りではなくゆがんだ形になってしまうことです。
- 偽関節:骨折したところが固まり切らなかったために、関節でないのに曲がってしまう状態
- 変形:骨折したところが元の状態よりも曲がって固まってしまった状態
上記の二つが認定対象となります。
(1) 偽関節
- 大腿骨の骨幹部又は骨幹端部
- 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等
- 脛骨の骨幹部等
上記に、ゆ合不全があれば認定を受けられる可能性があります。
そのうえで、「著しい運動障害」があれば7級、なければ8級となります。
「著しい運動障害」とは、常に硬性補装具を必要とする場合をいいます。
内容 |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
7級 |
419万円 |
1000万円 |
56% |
1下肢に偽関節を残すもの |
8級 |
331万円 |
830万円 |
45% |
(2) 変形
「長管骨」と呼ばれる、足の骨の中でも太く長い大腿骨(太もも)、脛骨(すね)、腓骨(ふくらはぎ)の骨について、簡単に言えば、
- 15度以上屈曲した不正ゆ合
- 骨端部などのゆ合不全や欠損
- 直径が3分の2以下に減少
- 大腿骨では内向きや外向きにひねることに制約が生じている
などの変形が生じていれば、12級に認定される可能性があります。
なお、実際の認定条件は、上記よりもとても細かくなっています。
被害者様が認定を受けられるかどうかは、弁護士とよく相談してください。
内容 |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
長管骨に変形を残すもの |
12級 |
94万円 |
290万円 |
14% |
4.足の短縮障害
「下肢の短縮」は、上前腸骨棘(骨盤の骨が一番横に広がっているところ)と、下腿内果下端(足首の前側)の間を測って、短くならなかった足との差を出します。
内容 |
等級 |
自賠責基準の後遺障害慰謝料 |
弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
労働能力喪失率 |
---|---|---|---|---|
1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
8級 |
331万円 |
830万円 |
45% |
1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
10級 |
190万円 |
550万円 |
27% |
1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
13級 |
57万円 |
180万円 |
9% |
5.まとめ
足や足指の後遺障害は、一見すると障害があることが明らかなため、思い通りの支払いを受けられるように思えるかもしれません。
ところが、実際のところは満足のいく損害賠償請求ができないおそれがあります。
特に機能障害では可動域の測定が難しく、医師任せにするとうまくいかないことが珍しくないのです。
後遺障害等級認定申請の前に、認定を受けるうえで大切な医学的検査や診断書の依頼について弁護士と相談しましょう。
弁護士に依頼すれば損害賠償金の相場を上げて金額を増額できる可能性があります。
逸失利益を減らそうとする任意保険会社に反論することもできます。
泉総合法律事務所は、これまで多数の交通事故被害者の方の損害賠償請求をお手伝いしてまいりました。
下肢の機能障害で損害賠償請求をご検討の方は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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