交通事故でむち打ちに!正しい後遺障害認定のためのポイント
交通事故に遭い、負傷をしてしまった場合、外傷などの外見や医学的に分かりやすいものであれば、その怪我の程度は判断しやすいものです。
しかし、むち打ちになってしまった場合は、自分で症状を感じていても、外見や医学的に症状を明らかにできないことも多いので、難しい問題が生じがちです。
ここでは交通事故のむち打ちでは後遺障害認定を受けることは難しいのか、そして、後遺障害認定を受けるためのポイントをみていきます。
このコラムの目次
1.交通事故によるむち打ちの治療における問題点
(1) むち打ちとは
むち打ちとは、交通事故の際、自動車の追突や衝突で、頸の部分に急激な衝撃がかかったことにより、頭や頸の部分を損傷してしまう怪我です。
むち打ちで表れる症状としては、頭痛や手足のしびれ、吐き気、めまい、耳鳴り、首や肩の凝り、疲労感を感じるなどの症状があります。
しかし、症状の程度には、大きな個人差があります。
(2) 一般的なむち打ちの治療期間
事故の際の衝撃が軽い場合には、むち打ちは、一般的には2、3か月程度で良くなり、長くても1年以内に治ると考えられています。
しかし、一部には、1年以上かかっても治らず、長期の通院が必要になる場合もあります。
また、長期の通院にも関わらず、これ以上治療しても改善が見込めないと医師が判断(症状固定)し、後遺症が残る場合もあります。
(3) 治療の打ち切り問題と後遺障害認定
むち打ちで長期に通院している場合には、被害者の心理的要因が影響していることも多いとされています。
そのため、裁判では、事故と長期の通院との因果関係が認められないケースも多くなっています。
しかし、被害者としては、むち打ちの自覚症状がある限り、長期に渡ったとしても通院して治したいと思うことは当然のことといえます。
ところが、交通事故から3か月又は6か月余り経過すると、加害者側の保険会社から治療の打ち切りの打診がある場合があります。
そして、被害者は、通院を継続したいと思っていても、保険会社から今後の治療費は出せないなどと言われ、通院を止めることになってしまうことがあります。
また、被害者が保険会社の治療の打ち切りの打診を無視して、治療を継続してしまえば、保険会社からの治療費の支払いがストップするということもあります。
むち打ちには、このような問題が生じることがありますが、保険会社と直接交渉するか、早めに弁護士に相談し交渉してもらうなどして、適正な期間の治療の継続を求めなければなりません。
むち打ちでは、通院期間が3か月や6か月程度で症状固定したような場合は、後遺障害として認定される可能性が非常に少なくなります。
ですから、後遺障害認定を受けられるはずであったのに、治療を打ち切ってしまったために認定を受けられなかったといった事態を防ぐためにも、適正な期間の治療の継続は必要なのです。
2.後遺障害認定とは
(1) 後遺障害とは
そもそも後遺障害とは、どのようなものなのでしょうか。
後遺障害とは、交通事故の怪我の治療を継続していてもこれ以上改善が見込めないと医師が判断(症状固定)した場合に、残っている一定の障害に対して後遺障害等級の認定を受けたものをいいます。
つまり、後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けたものが後遺障害ということができるでしょう。
(2) 後遺障害等級の認定
後遺障害に当たるのではと思った場合には、医師に記載してもらった「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」などの必要書類を揃えて、後遺障害等級の認定を申し立てることになります。
後遺障害等級の認定は、損害保険料率機構が設置している調査事務所で行います。
そして、調査事務所では、申し立てについて、後遺障害に該当するのかどうか、そして、後遺障害に該当する場合はどの等級に当たるのかなどを調査して、認定の有無やその等級を判断します。
(3) 後遺障害認定の申請方法
後遺障害認定の申請方法には、2通りの方法があります。
1つ目は、「事前認定」という方法で、加害者側の保険会社が便宜的に申請手続きを行ってくれるものです。そして、2つ目は、「被害者請求」という方法で、被害者側が自ら申請手続きを行うものです。
しかし、後遺障害等級の適切な認定を受けるためには、「被害者請求」の方法で行うことがポイントになります。このポイントについては、後述します。
(4) 後遺障害認定で得られるメリット
後遺障害認定を受けると、通常の治療費等だけではなく、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を損害賠償として請求できるようになります。
「後遺障害慰謝料」は、後遺障害に対する精神的苦痛の慰謝料で、認定された等級に応じて支払われるものです。
そして、「逸失利益」は、本来得られるはずであった利益をいい、具体的には後遺障害によって得られなくなった収入を補償するために支払われるものです。
つまり、後遺障害認定で得られる最大のメリットとしては、支払われる損害賠償額が大幅に増額することといえます。
3.むち打ちの後遺障害認定
(1) むち打ちの後遺障害
むち打ちの後遺障害としては、次に当てはまる場合があります。
- 第14級9号 局部に神経症状を残すもの
- 第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
- 第9級10号 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な限度に限定されるもの(他覚的な所見がみられる場合に限る)
- 第7級4号 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの(他覚的な所見がみられる場合に限る)
一般的なむち打ちであれば、自覚症状はあっても他覚的な所見がみられる場合が少なく、第14級か12級の認定を受けることが多くなります。
(2) むち打ちの後遺障害認定は難しい?
後遺障害等級の認定の有無により、損害賠償額が大幅に変わるので、今後の生活を考えると、できるだけ認定を受けたいものです。
しかし、むち打ちは、自覚症状はあっても他覚的所見がないことも多く、他覚的所見が明確な外傷などと違い、後遺障害認定を受けるには、困難を伴うことが多く、難しいといえるでしょう。
ただ、難しくはありますが、戦力的に治療し、必要書類を用意できれば、症状に応じた後遺障害等級認定を受けることができる可能性は高くなります。
ですから、適正な認定を確実に受けるためにも、早めに弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受け、戦略的に治療して必要書類を準備することをお勧めします。
次に、認定を受けるためのいくつかのポイントをみていきます。
4.認定を受けるためのポイント
むち打ちで後遺障害等級の認定を受けるためには、いくつかのポイントがあります。
(1) 必要書類を確実に揃える
後遺障害等級の認定は、原則として“書面”で行われるので、何といっても提出する書類を丁寧に用意することが、認定を受けるためのポイントになります。
むち打ちの後遺障害等級の認定を受けるために、提出する書類で注意しなければならない点には、次のようなものがあります。
- 交通事故と後遺障害との因果関係があることを記載する
交通事故の状況から後遺障害が残ることの説明がつくように記載します。 - 治療が中断することなく定期的に行われており、症状も続いていることを記載する
病院での治療を定期的に行っており、1か月上の治療中断期間がないことを記載します。そして、交通事故から症状固定の日まで症状がずっと続いていることを記載します。 - 症状の裏付けとなる客観的な医学的所見を表す資料を用意する
むち打ちによる痛みや手足が曲がりにくいといった自覚症状を、他覚的に裏付ける「MRIやレントゲンなどの画像所見や各種の検査結果」の資料を用意します。 - 認定に不利益な記載がなされていないか確認する
後遺障害診断書などに、「改善できる余地がある」などの記載がなされていないことを確認します。
(2) 認定の申請方法は、被害者請求で行う
後遺障害認定のための申請手続きの方法は、前述の通り、保険会社が行う「事前認定」と被害者本人が行う「被害者請求」の2つの方法があります。
「事前認定」は、加害者側の保険会社が手続きを行うので、被害者本人は申請手続きの点では楽をできます。しかし、加害者側の保険会社は、後遺障害認定がなされると、損害賠償額が大幅に増額することになるので、認定に積極的な立場とは考えられません。
ですから、認定に際して、最低限の必要書類のみを提出したり、書類に提出漏れがあったりする可能性もあります。
一方、「被害者請求」であれば、被害者本人が自身に有利となる書類を工夫して申請するので、適正な後遺障害認定を受けることができる可能性が高まり、自身が深く手続きに関わるので、その結果にも納得しやすいものといえます。
5.後遺障害認定も弁護士にサポートを依頼できます
このように、むち打ちは、他覚症状が分かりにくく、保険会社に治療の打ち切りを迫られることや認定の必要書類としてはどのようなものが効果的か分からないといった難しい問題が生じることがあります。
ですから、専門家である弁護士に早めに依頼することが、後遺障害認定を受けるための大きなポイントになります。
事故直後から正しい後遺障害等級認定を見据えた治療方針で治療を受けていなければ、適切な認定を受けることができない場合も多いものです。
そういった事態を招かないためにも、できるだけ早く弁護士に相談し、先を見据えたアドバイスを受けることが、適切な後遺障害等級の認定につながることを覚えておくと良いでしょう。
川越市、坂戸市、東松山市、ふじみ野市、富士見市、東武東上線・JR川越線・西武新宿線沿線にお住まい、お勤めの方で、交通事故によりむち打ちになってしまった方、後遺障害認定でお悩みの方は、是非一度泉総合法律事務所の専門家の弁護士にご相談ください。
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