盗撮は何故バレる?逮捕された場合の正しい対応

盗撮は、常習性の高い犯罪といわれています。
というのも、初犯で逮捕されなかった場合、「これなら捕まらない」と考え、エスカレートして何度も繰り返し犯罪を行ってしまうケースが多いためです。
しかし、捕まらなかったのは偶然であり、繰り返すほど逮捕の可能性は高くなりますし、罪も重くなってしまいます。
初めて逮捕された時点で既に100件以上の犯行を重ねていることもあり、そうなれば初犯でもそれら余罪を考慮されて通常より重く処罰されることがあり得ます。
では、盗撮がバレてしまった場合には、警察や被害者の方に対し、どう対応するのがベストなのでしょうか?
今回は、盗撮で逮捕されてしまった場合の正しい対応方法をお伝えします。
このコラムの目次
1.盗撮は何罪?
まず、盗撮行為に関する基礎的な知識を学んでおきましょう。
どのような犯罪が成立し、どのような罰則が科されるのでしょうか。
(1) 迷惑防止条例5条2項違反
盗撮行為は、複数の法律に反します。
その中でも代表的なのは、「迷惑防止条例違反」です。
迷惑防止条例は、各都道府県が定める条例のため、各都道府県ごとに少しずつ内容が異なっていますが、罰せられる行為の態様はほとんど変わりありません。
東京都の条例(正式名称は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)を見てみましょう。
東京都迷惑防止条例では、盗撮行為を「通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」と定義しています。
また、場所に関しては、以下のように規定しています。
- 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
- 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物
東京都の場合、こうした場所で盗撮行為を行うと「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となる可能性があります。
ちなみに、迷惑防止条例違反の盗撮行為は、原則として性犯罪を対象としているため、映画館で映画を盗撮する行為に関しては適用されません。
これについては著作権法で罰せられます。
(2) 軽犯罪法第1条第1項23号違反
盗撮の場合、軽犯罪法の覗き見罪として処分される可能性もあります。
具体的には、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」は「拘留・科料」に科せられることが規定されています。
拘留・科料に関しては、1日以上30日未満の拘置、1,000円以上10,000円未満の罰金が内容となります。
これら以外でも、盗撮目的で住居や駅構内、ショッピングモールなどに立ち入ると、建造物(住居)侵入罪(刑法130条)となり、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が科される可能性があります。
駅やモールは誰でも入ることができますが、それはあくまで買い物目的の人についてのみであり、建物の管理者は盗撮をはじめとする犯罪目的で人が入場することを許していないといなされるため、管理者の意思に反して建物に入ったという犯罪の要件が満たされるのです。
このように盗撮行為は、1つの行為だけではなく複数の罪に問われる可能性があるのです。
それとは別に、民事でも、被害者から損害賠償請求が行われる可能性があることを理解しておきましょう。
2.盗撮がバレるケース
次に、盗撮がバレて逮捕されるケースとしては、「現行犯逮捕」と「後日逮捕」の場合にわけることができます。
(1) 現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、現に犯罪が行われている場合や、犯罪が行われた直後に逮捕するケースを指します。
現行犯逮捕は警察官ではなくとも、一般人でも可能です。盗撮の場合、7割はこの現行犯逮捕で捕まっています。
捕まる状況としては以下の通りです。
- 本人が助けを求める
- 周囲が気づき捕まえる
- おとり捜査で警察官に逮捕される
痴漢行為の場合は、被害者自身は恐怖のために自分で声をあげられないという事例が多数あります。
そのため、電車を降りてから警察に通報するケースがよくあります。
しかし、盗撮の場合は、直接触ってはいないため、身体に対する脅威が痴漢に比べると少なく、その場で助けを求めるケースや、「やめてください」と制止するケースが多くなっています。
本人に捕まり、駅員等に通報された場合は現行犯逮捕となるケースが多いでしょう。
次に、周囲が気づくケースです。エスカレーター乗車中などに後方からスカートの中を盗撮している場合、本人は気づいていないケースがあります。
しかし、周囲が気づき、逮捕した上で通報するというケースがよくあります。
さらに、警察官が痴漢や盗撮が報告された車両・ホームなどで見張りやおとり捜査を行っているケースがあります。この場合、被害者が警察官になると、言い逃れすることはできません。
今は捕まっていなくとも、被害者が通報している場合はその場に警察官がいる可能性が高くなるのです。
(2) 後日逮捕
後日逮捕とは、犯行直後や犯行時に逮捕される以外のケースのことです。
捜査機関が十分な証拠を集めてから、裁判官に逮捕状を請求し、犯人を逮捕する場合となります。
その場で逃げ切れたとしても、数日経ってから警察が家に直接逮捕しにくる場合があるということです。
具体的には、以下のような証拠から犯人逮捕にたどり着きます。
- 防犯カメラに映っていた
- 被害者の証言から犯人を特定した
- SuicaなどのICカードの履歴から特定した
- 建造物(住居)侵入罪を伴う場合、建物管理者からの情報提供があった
現行犯逮捕を逃れ、後から証拠をもとに逮捕に至るケースは3割程度です。
被害者や周囲が目撃した犯人の服装や背丈などをもとに、防犯カメラの映像を解析します。これ以外でも、SuicaなどのICカードの履歴を元に、犯人を割り出すことができます。
盗撮以外にも、建造物侵入罪などが成立しうる場合には後日逮捕の可能性は高くなるでしょう。建造物侵入の最高刑は懲役3年であり、盗撮そのものより重罪であるため、盗撮のみの場合よりも重大悪質という評価になるためです。
3.盗撮がバレた後の正しい対応方法
最後に、盗撮がバレてしまった場合の正しい対処法をお伝えします。
(1) 盗撮がバレた後のNG行為
盗撮がバレてしまうと、気持ちが焦ってしまい、突拍子もない行動をとってしまうことがあります。
バレてしまった場合でも、以下の行為は行わないようにしましょう。
逃げない
盗撮や痴漢がバレると「逃げるが勝ち」のような噂を散見しますが、これは適当とはいえません。
逃げたとしても、防犯カメラの映像などから後日逮捕をすることは可能であり、逃げた事実によって捜査機関や裁判所の心象を悪くしてしまう可能性が高くなります。
捜査機関から「反省していない」と捉えられ、同じ行為でもより重い処分がなされる可能性もあるのです。
盗撮の事実がある場合は、その場で対応し、反省する態度を見せるようにしましょう。
被害者、警察官に怪我をさせない
また、警察が来る前に被害者と口論になってしまうことがあります。
「スマホを見せてください」といわれ、激昂して相手と言い合いになり、突き飛ばしたりしてしまうと罪が重くなります。
警察官の肩を押したり、抵抗したりすると、より重い公務執行妨害罪で逮捕される可能性もあるので、絶対にしてはいけません。
つばを吐きかけ、壁を殴るなど警察官に直接触れなくても罪になります。冷静に対処しましょう。
その場で示談交渉をしない
さらに、その場で交渉をするのも適切な行為とはいえません。
その場では相手にどれだけの損害を与えたか、それを償うにはいかほどかかるか判断することが困難ですし、被害を弁償すると約束した後で、被害者が法外な値段の慰謝料を要求してくるケースもあります。
賠償以外の細かな条項を検討することも難しいですし、当事者双方にとって適正な解決が得られる余地は少ないです。
示談に関しては、後日弁護士を通して適切に処理するのが賢明です。
(2) 適切な対応はすぐに弁護士に相談すること
現行犯逮捕、後日逮捕、どちらの場合であっても適切な対応は、できるだけ早い段階で弁護士に連絡することです。
弁護士に依頼するメリットとしては以下が挙げられます。
- 取り調べに先立ち、必要な助言が得られる
- 思わぬ金銭トラブルに巻き込まれない
- 本人が対応する場合に比べ示談、釈放が早まることが期待できる
盗撮事件は、初犯であれば(余罪の存在や悪質性にもよりますが)起訴されることは少なく、拘束されても示談さえ成立すれば早期釈放が見込めます。
しかし、明らかな犯罪事実の証拠があるのにもかかわらず、否認を続ける、逮捕の際に抵抗するなどがあると、釈放までの道のりが険しくなってしまいます。
被害者の申し立てている内容と事実と違う部分がある場合は、弁護士に伝えるようにしましょう。適切な助言が得られます。
また、弁護士を通して示談すれば、先例に照らして合理的な内容の合意とすることが期待でき、余計な金銭トラブルにも巻き込まれません。
「警察に通報されたくない」一心で、当事者同士で示談してしまうこともありますが、適切な合意がなされず、あるいは証拠を残さなかったために、後からさらなる請求を受ける可能性もあります。
弁護士を通して適切な示談を行うことで、このような後日トラブルは防げるでしょう。
刑事事件の弁護活動は逮捕後3日間が重要です。できるだけ早めに専門家である弁護士にご連絡ください。
4.盗撮事件の示談交渉は弁護士にお任せを
「示談さえまとめれば、自分で対処できる」と考える方も多いでしょう。
しかし、現実には被害者は加害者や加害者家族と話すことすら嫌がります。
被害者は盗撮された事実によって精神的に傷ついているのですから当然でしょう。交渉以前に、連絡先や名前すら知られることを忌避するのが通常です。
加害者側から何度も交渉や面会を求めると、「脅迫されている」と感じてしまうかもしれません。
これを避けるためにも、示談交渉は弁護士に任せましょう。「弁護士であれば話しても良い」という被害者の方は多数います。
また、刑事事件に精通した弁護士であれば、示談交渉の経験も豊富なため、安心して任せられるはずです。
ご自身やご家族だけで示談交渉を行うよりもはるかに迅速に解決できます。
泉総合法律事務所は、刑事事件に精通した弁護士が示談交渉をお手伝いします。盗撮事件で逮捕された、逮捕されそうなどのお悩みがある場合は、できるだけ早めに専門家である弁護士にご相談ください。
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