刑事事件

飲酒運転で逮捕されてしまった場合の刑事弁護

飲酒運転で逮捕されてしまった場合の刑事弁護

飲酒運転は犯罪、ということは、もう皆さんご存知でしょう。

しかし、飲酒運転なかなかは無くなりません。
実際、飲酒しているのについ運転してしまい、その際に人身事故を起こして警察を呼ばれてしまった、あるいはそのまま逃げてしまったということがあります。

このような場合、どのような罪に問われるのでしょうか。

以下においては、飲酒運転の罪と刑罰、飲酒運転で逮捕された後はどうなるのか、飲酒運転を伴う事犯の刑事弁護などについて、説明することとします。

※自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律は「自動車死傷法」、道路交通法は「道交法」、執行猶予は「猶予」、保護観察は「保観」といいます。
そして、統計とは、犯罪白書(平成30年版)の平成29年の統計を意味します

1.飲酒運転の罪名と刑罰

道交法は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」(65条1項)とした上、酒気を帯びた状態での運転について、酒酔い運転と酒気帯び運転の規定を設け、下記表のように、それぞれの運転に伴う罰則規定を置いています。

罪名

刑罰(罰則規定)

酒酔い運転

5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(117条の2第1号)

酒気帯び運転

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(117条の2の2第3号)

酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転したことをいい、酒気帯び運転とは、身体に政令(道交法施行令44条の3)で定める程度(血液1mℓにつき0.3mg又は呼気1ℓにつき0.15mg)以上にアルコールを保有する状態で車両等を運転したことをいいます。

飲酒運転の疑いで検挙した警察官は、通常、その運転者について、呼気検査を実施し、質問(人定事項等)に対する応答状況、言語態度状況〈しゃべり方)、歩行能力(約10mを真直ぐ歩行させたときの状態)、直立能力(10秒間直立させたときの状態)、酒臭・顔色・目の状態などの調査結果を総合して、酒酔いか酒気帯びかを認定します。

したがって、飲酒検知管の数値が、呼気1ℓにつき0.15mg未満で、酒気帯びに該当しない場合であっても、酒に弱い人は、酒酔いと認定されことがあり得るのです。

2.飲酒運転中で人を死傷させた場合の刑罰

(1) 危険運転致死傷罪

アルコールの影響で正常な運転が困難な状態での運転により人を死傷させた場合には、危険運転致死傷罪(自動車死傷法2条1号)が成立します。
この場合、人を負傷させた者は15年以下の懲役に、人を死亡させた者は1年以上20年以下の懲役に処せられます。

統計では、致死の場合は100%実刑、致傷の場合は9.7%実刑、90.3%猶予(ただし、危険運転致傷全体での%)となっています。

また、アルコールの影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態での運転により、人を死傷させた場合には、自動車死傷法3条1項の危険運転致死傷罪が成立します。
この場合、人を負傷させた者は12年以下の懲役に、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処せられます。

この場合でも、統計では、致死の場合は100%実刑、致傷の場合は9.7%実刑、90.3%猶予となっています。

(2) 過失運転致死傷アルコール影響発覚免脱罪

アルコールの影響で、運転上必要な注意を怠って人を死傷させたとき、その影響の有無や程度の発覚を免れるため、更にアルコールを摂取したり、その場を離れて身体に保有するアルコール濃度を減少させたりした場合には、過失運転致死傷アルコール影響発覚免脱罪(自動車死傷法4条)が成立します。

この場合、12年以下の懲役に処せられます。統計では、致死の場合は100%実刑、致傷の場合は5.6%実刑、94.6%猶予となっています。

なお、その場から逃げた場合には、これとは別にひき逃げの罪も成立します。

(3) 飲酒運転の罪と過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪は、運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合に成立します。この場合、7年以下の懲役若しくは禁錮又は 100万円以下の罰金に処せられます(ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑が免除される場合もあります。自動車死傷法5条)。

酒酔い運転の罪と過失運転致死傷罪との併合罪の場合には、一般的に懲役刑が選択され、10年6月以下の懲役に処せられます。

また、酒気帯び運転の罪と過失運転致死傷罪との併合罪の場合には、同じく懲役刑が選択され、10年以下の懲役に処せられます。

過失運転致死傷の統計では、致死の場合は5.8%実刑、94.2%猶予、致傷の場合は1.3%実刑、98.7%猶予となっています。
なお、飲酒運転は、重大な過失(悪質な運転)と位置づけられています。

(4) 飲酒運転の罪、過失運転致死傷罪とひき逃げの罪

ひき逃げの罪は、通常、道交法72条1項前段の救護義務違反の罪と同条項後段の報告義務違反の罪を指し、重い救護義務違反の罪で処断されます。

そして、飲酒運転中に人身事故を起こした場合の救護義務違反の罪の刑は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金になりますので、結局、飲酒運転の罪(酒酔い運転の罪又は酒気帯び運転の罪)、過失運転致死傷罪とひき逃げの罪との併合罪の場合には、一般的に懲役刑が選択され、15年以下の懲役に処せられます。

量刑傾向は、致死の場合は100%実刑のようです。
致傷の場合は、さしたる交通前科もなく、示談成立又は成立が確実で、被害感情が良いときは執行猶予の可能性があります。

飲酒運転の位置づけは、(3)と同じです。

3.飲酒運転の罪の量刑傾向

飲酒運転の罪については、車種、運転動機、酒酔いの程度、運転方法の危険性、運転距離・場所、物損等被害の有無・程度、反復性などの犯情が考慮されて、量刑が決められています(検察官も、上記犯情を基に、起訴か不起訴か、公判請求か略式請求かを決めることになります)。

量刑傾向は、おおむね次のとおりです。

(1) 罰金刑の場合

酒酔い運転の罪の場合には、初犯であれば、40万円~100万円の範囲、その中でも50万円程度の罰金刑が多いようです。

また、酒気帯び運転の罪の場合には、初犯であれば、10万円~50万円の範囲、その中でも20万円~30万円程度の罰金刑が多いようです。

なお、酒酔い運転及び呼気1ℓにつき0.25mg以上の酒気帯び運転は免許取消し(欠格期間は、前者で3年、後者で2年)に、また、呼気1ℓにつき0.15mg以上0.25mg未満の酒気帯び運転は90日の免許停止になりますので、飲酒運転単独の罪が、短期間内に繰り返されるのは、通常、ごく稀ということになります。

(2) 懲役刑の場合

下記の表記は次のとおりです。

なお、統計では、道交法違反全体の場合、実刑15.9%猶予84.1%となっています。

交通事犯による公判請求歴がある場合

交通事犯で猶予中

交通事犯で実刑歴あり(猶予可能の場合)

交通事犯で猶予歴あり 

酒酔い運転

実刑確実

原則として実刑(情状により保観)

原則として実刑(情状により保観)

酒気帯び運転

実刑確実

原則として実刑(情状により保観)

原則として実刑(情状により保観)

 

交通事犯による公判請求歴がない場合

因子

他罪で猶予中

犯情悪質

その他

酒酔い運転

原則として実刑(さしたる交通前科がない場合は保観)

情状により実刑又は猶予(保観考慮)

猶予が原則

酒気帯び運転

原則として実刑(さしたる交通前科がない場合は保観)

情状により実刑又は猶予(保観考慮)

猶予が原則

4.飲酒運転で逮捕された後

飲酒運転の容疑で逮捕された場合、住居不定又は逃亡のおそれに当たればともかく、被疑者は、勾留されずに、捜査機関側が任意に釈放しているのが一般的です。

また、飲酒運転中に人身事故を起こした場合でも、危険運転致死傷やひき逃げなどのように、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが強ければともかく、一般的には、勾留にまで至っていないのが現状のようです。

5.飲酒運転を伴う事犯の刑事弁護

上記のような量刑傾向からしますと、飲酒運転のみの場合には、ある程度客観的に量刑が決まってしまうようにも思われます。
では、飲酒運転による人身事故の場合、実刑・猶予の判断基準はどうなるのでしょう。

量刑に関する研究によれば、実刑相当を除く事案においては、結果が重大(被害者死亡や被害者に後遺症が生じているなど)である場合、禁錮以上(猶予を含む)の前科がある場合、被害弁償や示談成立がなされていない場合には、実刑にする傾向があり、他方で、誠意をもって被害弁償や示談成立に努め、被害者側も宥恕・寛大な刑を望んでいる場合には、猶予にする傾向にあるとしています。

そして、過失運転致死傷や道交法違反全体の統計では、罰金や不起訴処分(起訴猶予)の件数が公判請求の件数よりもはるかに多いので、あくまでも事案によるとはいえ、人身事故の事犯で罰金や不起訴となるためには示談が必要不可欠ですし、上記のように、特に、示談の成立(それに伴う宥恕を含めた被害感情)が実刑・猶予の判断はもちろん、刑期の軽減にも影響するといえるのです

【贖罪寄附について】
贖罪寄附をすれば、量刑上有利に扱われるのでしょうか。
贖罪寄附は、より深い反省の気持ちを表すものですが、その一方で、金で刑を買うという印象も拭えません。そのため、贖罪寄附を有利な情状とみるか否かは、裁判官によっても考え方が分れているといわれています。
しかし、示談が成立しない場合の贖罪寄附については、被害者側を度外視して、金で有利な処分を買うことになりますので、一般的には、有利な要因とまではいえないと解されています。

6.まとめ

身柄拘束の有無にかかわらず、飲酒運転中に人身事故を起こしてしまった場合は、いかに示談が重要かはお分かりいただけたことと思います。

飲酒運転で人身事故を起こしてしまった場合は、お早めに弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所は、スピード勝負である刑事事件に迅速に対応するのはもちろん、示談を含め、事案に応じた見通しをお示しするとともに、取り調べに関するアドバイスも適切に行っております。
刑事事件・交通事犯に精通している当事務所に、是非とも刑事弁護をご依頼ください。

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