刑事事件

息子や娘が少年事件で逮捕されてしまった場合、親がすべきことは?

息子や娘が少年事件で逮捕されてしまった場合、親がすべきことは?

息子や娘が「警察に逮捕された」と聞いたら、どのような方でも気が動転してしまうものです。

未成年が逮捕された場合には、原則的に「少年事件」という手続きになり、一般の大人の刑事手続とは大きく異なる取扱いをされます。

少年事件と成人の刑事事件とでは何が異なるのでしょうか?また、子どもが逮捕されてしまったとき、親としてどのような対応をとるべきなのでしょうか?

1.未成年が逮捕された場合の処罰

未成年でも罪を犯すことがあります。

例えば、万引きやひったくり、恐喝、暴行などは、子どもが主体となることが多々ありますし、最近では「オレオレ詐欺(振り込め詐欺)」に関与する未成年も多くなっています。

子どもが逮捕されたとき、まず思い浮かぶのは、「いつ出てこられるの?」「どのくらいの刑罰を受けるの?」ということではないでしょうか?

実は、未成年の場合には、原則として「処罰」されません

未成年が罪を犯した場合には、処罰ではなく、少年法に基づく更生のためのプログラムが組まれるからです。

ただし、殺人などの一定以上の重い罪を犯した場合には、未成年でも成人と同様の扱いになって「処罰」を受ける可能性があります。

2.未成年の場合「少年事件」になる

(1) 少年事件とは

では、子どもが逮捕された場合、どのような取扱いをされるのでしょうか?

逮捕されたのが19歳以下の未成年の場合には、「少年事件」という手続きによって処遇を決められます。少年事件とは、罪を犯した未成年者や放っておくと罪を犯すかもしれない少年を保護し、更生させるための手続きです。

少年事件の審理が行われるのは家庭裁判所であり、少年には「懲役刑」や「罰金刑」などの「刑罰」ではなく、「保護観察」や「少年院送致」などの「保護処分」が言い渡されます。

(2) 少年事件と刑事事件の違い

少年事件と成人の刑事事件とでは何が異なるのかをみてみましょう。

①対象者の年齢

少年事件と刑事事件では、対象者の年齢が異なります。

少年事件の対象者は、14歳から19歳までの未成年です。13歳以下の場合には刑事責任能力が無いので少年事件にはならず、児童相談所へ送られます。

刑事事件になるのは基本的に20歳以上の人です。

大学生でも20歳になったら刑事事件になりますし、高卒で働いていても19歳以下なら少年事件になります。

②審理する裁判所

少年事件と刑事事件とでは、裁判所も異なります。

少年事件を担当するのは家庭裁判所ですが、成人の刑事事件を担当するのは地方裁判所です。

少年事件の場合、家庭裁判所が保護的な見地から処分を決めるのに対し、刑事事件の場合には犯罪者を裁いて刑罰を下すという目的の違いがあるためです。

③検察官の関与

少年事件では、検察官の関与は薄いです。家庭裁判所へ少年を送った後は、基本的に手続きに関係なく少年審判にも出頭しません。

審判には、家庭裁判所の裁判官と書記官、少年本人と保護者、付添人が出席して、裁判官が適正な処分を判断します。検察官のように少年の罪を追及してくる人は存在しません。

成人の刑事事件の場合には、捜査時はもちろんのこと、起訴後の公判においても検察官が積極的に犯罪事実を立証して、被告人に適切な処罰を与えるように要求します。

裁判官は、検察官の追及と弁護側の防御活動の内容を見て被告人が有罪かどうかを判断し、有罪であれば被告人に適切な刑罰を与えます。

④調査官調査

少年事件と刑事事件との大きな違いとして「調査官調査」の有無があります。

調査官調査とは、家庭裁判所の調査官が少年の現状やこれまでの経歴、非行歴や非行傾向などを調べる手続きです。

調査の結果は担当裁判官に提出されますが、裁判官は調査官の意見によって大きな影響を受けるので、調査官調査は少年事件において非常に重要です。

これに対し、成人の刑事事件では調査官は関与しません。法廷で検察官が被告人を厳しく追及し、その内容を見て裁判所が被告人の刑罰内容を決定します。

⑤身柄拘束について

少年事件と成人の刑事事件とでは、身柄拘束に関する手続きもかなり異なります。

成人の刑事事件の場合、基本的には警察の留置場において「逮捕・勾留」による身柄拘束を受けながら捜査が進められ、起訴されても保釈されない限り、勾留が続きます。

少年事件の場合には、逮捕後勾留されることもありますが、勾留されずに家庭裁判所に送られて「観護措置」をとられることもあります。

また、勾留された場合でも、勾留期間が終わったら家庭裁判所で「観護措置」の決定があって少年鑑別所で身柄拘束されます。審判になっても保釈制度は適用されません。

⑥処分内容

少年事件と成人の刑事事件では、最終の処分内容が全く異なります。

成人の場合には、罰金や懲役、禁固などの「刑罰」が言い渡されますが、少年事件の場合、こうした刑罰はありません。

裁判所が判断するのは、保護観察にするか少年院送致にするか、試験観察とするか不処分とするかなどです。

少年が刑務所に行くことはありませんし、罰金も支払う必要がありません。

ただし、重大な罪を犯した場合には、再度検察官のもとに送られて(逆送)、成人と同じ刑事事件の手続きで裁かれます。その場合には成人と同じように処罰を受けます。

3.少年事件の流れ

検察官または家庭裁判所へ送致→勾留または観護措置→家庭裁判所へ送致→観護措置→少年鑑別書の鑑別検査と調査官調査→審判

(1) 検察官または家庭裁判所へ送致される

禁固刑以上の刑罰を科される犯罪の場合には、逮捕後48時間以内に検察官のもとに送られます。この手続きは成人の場合と同様です。

罰金刑以下の刑罰を科される事件の場合には、直接家庭裁判所へと送られます。これは少年犯罪独自の手続きです。

(2) 勾留または観護措置

検察官は、引き続いて少年の身柄拘束が必要と判断すると、裁判所に勾留請求します。裁判所が勾留決定すれば、少年は警察の留置場で身柄拘束され続けます。

また、検察官が勾留請求をせずに直接家庭裁判所へ少年の身柄を送ることもあります。

その場合には「観護措置」という処分となり、少年は少年鑑別所へと送られます。

(3) 家庭裁判所へ送致される

勾留期間が終了すると、検察官は少年を家庭裁判所へ送ります。

少年事件の場合、検察官に家庭裁判所へ送るかどうかの裁量はなく、全件が家庭裁判所へ送致されます。

成人の「不起訴処分」にあたる処分はありません。

(4) 観護措置

家庭裁判所へ送られると、少年には「観護措置」がとられて少年鑑別所に送られます。

(5) 少年鑑別所の鑑別検査と調査官調査 

少年鑑別所では、少年に対して心理学や教育学、社会学、医学などの専門的な見地から鑑別が行われます。

具体的には身体検査や鑑別面接、心理テスト、精神医学的な検査や診察、行動観察を行い、学校などの機関や家族からの聞き取りや資料の収集などを実施します。

また、家庭裁判所の調査官が面会に来て少年と話をし、少年の状態や考え方などを調べます。

調査官は、親と面会したり学校の先生などから聞き取りをしたりして、これまでの生育歴や非行歴、非行傾向の強さ、社会に戻したときに受け入れ体勢が整っているかどうかなどについても調査します。

(6) 審判

観護措置が開始すると、原則として28日以内に審判が開かれます。審判では、審判官(裁判官)が少年の処遇を決定します。

不処分や保護観察になったらそのまま社会内で生活することができますが、少年院送致になったら少年院に行かなければなりません。

審判には「即時抗告」という不服申立ができますが、即時抗告をしても少年院送致自体を止めることはできません。少年院で生活しながら審判の効力を争うことになります。

4.息子や娘が逮捕された時に親がとるべき対処法

もしも息子さんや娘さんが逮捕されてしまったら、親としてはどのような対応をとるのが良いのでしょうか?

(1) 弁護士に付添人を依頼する

まずは、弁護士に相談することをお勧めします。

①早期に身柄解放を実現できる

逮捕された時には、なるべく早期に身柄を解放してもらうことが大切です。身柄拘束が長くなると、学校にも通えない状態が続き、留年や退学などのリスクも発生するからです。

いったん逮捕されても、「勾留や観護措置の必要がない」と判断されると、在宅のまま捜査や調査などの手続きを進めてもらえる可能性があるので、勾留や観護措置決定前の、早期の対応が重要です。

身柄拘束を解いてもらうためには、少年に逃亡のおそれがないことや証拠隠滅のおそれがないことを検察官に理解してもらう必要がありますが、少年自身がそのような説明をするのは難しいです。

かといって、逮捕中は家族であっても少年に面会できないので、保護者が少年と会って対応策を相談することなどはできません。

弁護士であれば、逮捕直後の段階から少年に会って、適切な対処方法のアドバイスができますし、検察官や裁判所に勾留や観護措置の必要性がないことをアピールできて、身柄拘束を解きやすいです。

②示談交渉を進められる

被害者のいる事件の場合、弁護士が少年の代理で示談交渉を進めることができます。

少年事件でも、示談ができると良い事情として評価されるので、処分が軽くなる可能性が高まります。

③少年に適切な対処方法をアドバイス出来る

弁護士が少年と会って今後の手続きの流れを説明したり、調査官調査の意味などを説明したりして、少年に適切な対処方法を伝えることも可能です。

以上のようなことから、お子様が逮捕されたら、すぐの段階で弁護士に相談されることをお勧めします。

(2) 面会に行く

逮捕後3日間の面会できない期間が終わると、両親も子どもに面会できるようになります。

そうしたら、すぐに鑑別所などに会いに行きましょう。
子どもはいきなり逮捕されて混乱し不安な思いを抱えていますが、両親の顔を見ると安心して落ち着く場合が多いです。

面会に行ったら、安心させてあげるとともに、不足しているものがないか聞きましょう。例えば、衣類や本などを差し入れてあげると、少年が鑑別所で過ごしやすくなります。

また、弁護士に対応を依頼したことを説明すると、子どもも安心できますし、弁護士に対しても警戒心を説きやすいです。

(3) 調査官調査に対応する

少年審判では、調査官調査が非常に重要です。調査の結果により、少年の処遇が決まってしまうことが非常に多いからです。

調査官から呼び出しや資料提出の要請があったらきちんと対処し、心証を悪くしないように対応しましょう。

(4) 子どもの受け入れ体制を整える

少年が反省していても、自宅に帰ったときの環境が悪く、再度犯罪に及ぶ可能性があると判断されると少年院送致を選択される可能性があります。

そこで、子どもが家に戻ってきたとき、家族がしっかりと監督できて再犯を防げることを調査官や裁判所に分かってもらう必要があります。

帰ってきたらどんな生活をさせるのか、今後子どもとどのような関わりをしていくのか、これまでとはどのような点を変えるのか、悪友との付き合いを止めさせる方法など、子どもとも話をしてしっかり検討しましょう。

弁護士が相談を受ける場合、これまでの経験を元に有効な対処方法をアドバイスします。

(5) 学校や職場への対応

子どもが学校に通っていたり働いていたりする場合には、学校や職場への対応も必要です。

例えば、少年が鑑別所に留置されて学校に行けないなら、処分を待ってもらうために適切な説明をする必要があります。

身柄拘束が長期に及んできたら、学校側も不審に思って厳しく追及してくることも多々あるので注意が必要です。

また、警察から学校や職場に連絡が入ると不審に思われるので、警察を説得してこれを避けるべきです。

弁護士が対応していたら、職場や学校に対しても適切な対応をとれるので、退学や解雇などの不利益を避けやすいです。

5.お子さんが逮捕されたら泉総合法律事務所へ

息子さんや娘さんが逮捕されたとき、将来のためにも早期に弁護士に対応を依頼して、少年審判に向けて準備を進める必要があります。

泉総合法律事務所は、少年事件の相談・解決実績も豊富な、刑事事件に強い弁護士事務所です。弁護士が大切なご家族のために全力でサポート致しますので、どうぞお早めにご相談下さい。

初回のご相談は1時間無料となっております。

無料相談受付中! Tel:  0120-066-323 平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:30
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