刑事事件

酔った勢いで器物損壊をしてしまった…覚えていないが逮捕される?

酔った勢いで他人の物(例えば、店の看板や道路に設置されている物)を壊してしまったが、全く覚えていないような場合、どうなるのでしょうか。

酔っていたとはいえ、逮捕されるのでしょうか。それとも、故意でなければ弁償するだけで済むのでしょうか。

以下においては、故意ではない場合で器物を損壊するとどうなるのか、酔った勢いで器物を損壊した場合逮捕されるのか、器物損壊罪で逮捕された後はどうなるのかなどについて説明します。

1.故意ではない器物損壊罪

(1) 故意がない、又は過失による場合

器物損壊罪は、他人の物を損壊し又は傷害することによって成立します(刑法261条)。
この場合、3年以下の懲役、30万円以下の罰金又は科料(千円以上1万円未満)に処せられます。

では、他人の物を損壊するという認識を欠く場合、すなわち故意がない場合にはどうなるのでしょう。

刑法は、罪を犯す意思がなければ罰しないとしています。そうしますと、他人の物を損壊することについて、故意がなければ、器物損壊罪は成立しないことになります。

では、不注意で、すなわち過失により他人の物を損壊した場合はどうなるのでしょうか。

刑法は、過失犯を処罰するには、その旨の規定が必要だとしています。器物損壊罪には、過失犯を処罰する規定がありませんので、犯罪は成立しません。

しかし、以上のことは刑事上の責任の話ですので、故意ではなく過失で他人の物を損壊した場合でも、民事上の責任は発生します。そのため、民事上の損害賠償義務は負わなければなりません。

なお、器物損壊罪は親告罪ですので、告訴がなければ刑事罰が科されることはありません。

(2) 飲酒して心神喪失状態の場合

刑法は、心神喪失者の行為は罰しないと規定しているため、飲酒して心神喪失状態で他人の物を損壊した場合には、処罰されないことになります。

しかし、単に酔っていたというだけでは、器物損壊の刑事責任を免れることはできません。

心神喪失とは、一般的に、精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力がなく、又はこの弁識に従って行動する能力がない状態をいうと説明されています。

飲酒して心神喪失状態になるとは、普通ではあり得ない異常な酩酊状態、いわゆる病的酩酊をいうとされています。

酔っていて覚えていないというだけでは、病的酩酊とは判断されません。酩酊中の出来事について、記憶、追想が不可能ないしほぼ不可能で、完全ないしほぼ完全な健忘を示していることは、病的酩酊を示す一要因にすぎません。

酩酊中の出来事が、平素の人格や生活態度とは異質で、理解できない突飛な行動であれば、普通の酩酊では生じない、通常の人格から断絶した異質的な異常、変化がある状態にあったと判断され、病的酩酊を示す一番大きな要因となります。

そのほか、高度の酩酊にもかかわらず、犯行前の時点では、普通に行動しており、特に運動機能の面で異常があったわけではないことや、慢性のアルコール中毒による肝障害、高血圧による腎障害といった身体的に異常があるところに、ある程度のアルコールを摂取すると非常に変わった酔い方をしたことなども病的酩酊を示す要因となります。

精神鑑定でも、主に、上記のような要因を総合して、病的酩酊か否かが判断されることになります。

普段から酔っぱらうと乱暴を働くような場合は、酩酊中の出来事について記憶がなかったとしても、病的酩酊ではないので、特に心神喪失が問題となることはありません。

【器物損壊事件において心神喪失で不起訴となる割合】
実際、器物損壊事件において、心神喪失で不起訴となることはあるのでしょうか。
平成30年版犯罪白書及び2017年検察統計年報によれば、器物損壊罪における起訴率は19.1%、不起訴率は80.9%であり、不起訴となった者(5770人)のうち、心神喪失が不起訴理由であった者が0.6%(33人)となっています。
しかし、不起訴理由としての心神喪失の人員は、それに該当するものの総計ですので、飲酒酩酊による心神喪失か否かは、明らかでありません。
ただ、覚えていないほど酔うというのは稀でしょうから、器物損壊事件では、心神喪失が認められることは難しいと思われます。

2.酔った勢いの器物損壊は逮捕されるのか

器物損壊罪を犯した人のうち、逮捕されてしまう人も相当数いることが統計上も明らかになっています。

確かに、器物損壊罪の態様は多種多様であり、自動車・バイク・自転車のタイヤをパンクさせたような場合から、自動車・バイク・自転車に放火し公共の危険が発生しなかった場合や、自動販売機を損壊した場合なども広く含まれますので、悪質な事案の場合には逮捕されたとしてもやむを得ないかもしれません。

しかし、酔った勢いで他人の物を損壊した場合であれば、被害品が高額であったり、特段の前科があったり、常習的な犯行であればともかく、逮捕されることはあまりないと思われます。
(ただし、飲酒の程度が責任能力の存否に影響する場合には、罪証隠滅のおそれが問題となりますので、別途検討が必要になります。)

3.器物損壊罪で逮捕された後はどうなるのか

器物損壊罪で逮捕された場合でも、(住居不定又は逃亡のおそれに当たればともかく)勾留されずに釈放されるケースも少なからずあると思います。

しかし、事案によっては、被疑者は、逮捕から48時間以内に検察官に送致され、検察官は、被疑者を受け取ってから24時間以内に裁判官に対し、より長期の身体拘束を求める勾留の請求をすることもあります。

そして、裁判官は、検察官から勾留の請求があると、勾留質問を行い、その当否を審査しますが、罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要なときには、被疑者の勾留を認めることとなるでしょう。

勾留期間は原則10日間で、更に10日以内の延長が認められる可能性がありますが、悪質性のない一般の器物損壊事件や共犯者がいないような事案では、勾留延長が認められるケースはさほど多くはないように思われます。

したがって、当初の勾留満期において、起訴不起訴が決まることになるケースも少なくありません。

4.器物損壊罪の処分状況

平成29年の統計では、器物損壊罪で起訴した者のうち、公判請求をした者が41.9%、略式請求をした者が58.1%となっています。

酔って他人の物を損壊した場合には、不起訴あるいは罰金で処理されることが多いかと思いますが、仮に公判請求されたとしても、前科などがあったり、執行猶予中などの犯行であったりするなど、特別な事情がない限り、執行猶予となる可能性も高いと思われます。

5.器物損壊罪を犯した場合に考慮すべきこと

平成29年の統計によれば、検察庁が器物損壊罪で送致を受け、不起訴とした者のうち、告訴の欠如(告訴がそもそもない)・無効(告訴期間経過後の告訴)・取消し(いったんした告訴を取り消す)で不起訴とした者の割合は59.5%、起訴猶予で不起訴とした者の割合は17.2%となっており、両方を併せた割合は76.7%に及んでいます。

略式請求により罰金で終わっても、前科が付くわけですから、できれば略式請求も免れたいところです。

不起訴を獲得するためには、被害者と示談あるいは被害弁償をすることが考えられます。

被害者の告訴がなければ不起訴で終わりますので、被害者との示談成立あるいは被害弁償がなされれば、被害者が告訴を思いとどまったり、告訴を取り消したりしてくれる可能性も出てきます。

では、被害者と示談、あるいは被害弁償をするためには、どうしたらよいのでしょうか。

酔った勢いで他人の物を損壊した場合には、いろいろな原因が考えられ、まして酔っていて覚えていないとなれば、被疑者が直接に示談なり被害弁償の交渉をするのは、被害者の気持ちを損ないかねません。また、話をこじらせてしまうおそれがあります。

このような場合にこそ、被害者と冷静に交渉できる弁護士に依頼すべきです。弁護士であれば、被害者の気持ちにも配慮しながら、被疑者の反省と謝罪の気持ちを伝えてもらうとともに、金額も含め適切に対応することも可能です。

被害者に対する誠意ある謝罪と示談や被害弁償の措置を講ずることで、早期に示談の成立あるいは被害弁償ができれば、不起訴処分となる可能性も高くなり、仮に公判請求されたとしても、執行猶予がつく可能性も高くなります。

また、法律上実刑が避けられない場合でも、刑期が軽減される大きな要因となります。

6 まとめ

酔った勢いで他人の物を壊してしまった場合、逮捕されてしまうこともあります。
刑事事件はスピードが命ですので、もしそのような事件を起こした場合には、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

被害者と示談をすることで不起訴になり、前科が付くことを免れられる可能性があります。
川越市、坂戸市、東松山市、ふじみ野市、富士見市、東武東上線・JR川越線・西武新宿線沿線にお住まい、お勤めの方は、泉総合法律事務所川越支店の弁護士にぜひ一度ご相談ください。

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