刑事事件

横領と業務上横領についての基礎知識|示談交渉は弁護士へ

横領と業務上横領についての基礎知識|示談交渉は弁護士へ

「〇〇会社の元経理責任者、会社の資金〇億円を着服で逮捕」、「〇○銀行の窓口担当職員が、〇〇万円横領の疑いで書類送検」、など、横領に関するニュースは日々テレビなどで報道されており、皆様も何度も目にしていることではないでしょうか。

これらは身近に存在する犯罪でもあり、もしかしたらこのコラムをご覧になって頂いている方の中にも、「このような罪で捜査を受けている」、「家族が横領の罪で疑われ、逮捕されてしまった」という方がいらっしゃるかもしれません。

そこでここではこの「横領」「業務上横領」について詳しく解説します。

1.横領とは

刑法は、第252条にて、「自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する」と規定しています。

ではこの横領とはどのような犯罪なのか、そしてどのような刑罰が科されているのかを見ていきましょう。

(1) 横領の要件

ここでいう「横領」とは、他人から預かっているものについて、自分の利益のために使ってしまうことをいいます。

たとえば、会社から預かった預金通帳を使い、無断でそこから現金を引き出し着服したような場合をいいます。

条文にも書かれているとおり、犯人自身が現在占有しているが、実際は「他人の物」である必要があります。

また、解釈上その「他人」と「犯人」の間に委託関係があることが必要とされています。

つまり、横領の対象物につき、犯人が占有することに正式な権限があることが要件となっているわけです。

先ほどの会社の預金通帳の例ですと、会社から経理担当者などとして正式にその通帳や預金口座を管理する権限が与えられていることが横領罪成立のためには必要になる、ということです。

(2) 罰則

横領の罪を犯した場合は、5年以下の懲役刑が科される、と法定されています。

罰金刑が定められていないため、検察官は裁判を開かずに簡易な手続きで罰金額のみが決まる「略式罰金」という手続きはとることができません。

つまり、起訴された場合には、必ず裁判が開かれることになることには注意が必要です。

罰金刑がないということは、この裁判において執行猶予が付かなかった場合、即刑務所行ということがありうる、ということなのです。

(3) 業務上横領

刑法第253条は、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する」と規定しています。

業務上」とは、日常生活において反復・継続して行う事務のことを言う、と解されています。

例を挙げると、仕事として会社の経理を任され、その一環として会社の預金通帳や銀行口座の管理を行っていることや、成年後見人として親族の日常の財産の管理を任せていることなどがこれにあたります。

「業務上」という、より強い信頼関係が必要な中で侵された犯罪であること考慮して、横領罪に比べて罰則が2倍重くなっていることが分かると思います。

2.よくある事例

(1) 横領の危険性が高まる状況

上記の例でも挙げましたが、泉総合法律事務所に所属する弁護士の経験上、やはり多いのは会社のお金や商品、備品などを管理する立場にありながら、これを着服してしまったという事件です。

状況としては、

  1. 会社の物を着服できる環境にあること(管理する権限を与えられているのでこれは満たしていることが多い)
  2. 動機があること(たとえばお金に困っている、どうしても対象の商品が自分でも欲しい、などの欲求)
  3. 横領することを自己正当化できる事情がある(たとえば、「会社に対して自分はこれだけ尽くしているのに給与などではこれだけしかもらっていない」などの考えから、「横領してもこれは正当な報酬だから悪くないんだ」、といった自己正当化の理論が成立してしまったような場合です)

この3つがそろったときに横領の危険性は著しく高まると言われています。

皆様自身やご家族、ご友人などがこのような環境になってしまっていないか、注意する必要があります。

(2) 成年後見人の場合

また、よくあるとまでは言いませんが、当職の経験上注意が必要なのが「成年後見人」です。これはご家族が痴呆などにより判断能力が低下してしまった場合、家庭裁判所の選任によりその方の家族が代わって財産を管理することを認める制度になります。

例えば、高齢の母が痴呆になってしまい日常生活を送るのが難しくなってしまったときに、その息子が成年後見人としてその母の財産の管理を行う、ということです。

このような場合、「家族のものだし厳密に管理する必要がないのでは」、「どうせ相続するのだからいくらか自分がもらっても問題ないはず」、など甘く考えてしまい母親の財産の一部を着服してしまうと、裁判所の調査などでこれが発覚すると「業務上横領」として犯罪者となってしまうわけです。

特に母親が資産を多く持っていたような場合には、着服の額も大きくなり、一発実刑などもあり得るので、注意が必要です。

3.弁護活動

ではこのような犯罪では、弁護士(刑事事件では「弁護人」といいます)はどのような活動をすることになるのでしょうか。大きな活動としては2つです。

(1) 示談交渉

横領罪は他人の財産を侵害する犯罪です。すなわち、この財産的被害が回復されるのであれば、それはもっとも大きい事情として検察官の判断や裁判官の判断に影響することになります。

しかし、当時者である犯人自身が、被害者と交渉することはなかなか難しいところもあります。

とくに会社からの横領の例などでは、被害者である会社の方が絶対的に上の立場であることから、被害届の提出や解雇などをちらつかされ、実際の被害金額以上の金額を賠償させられる事例なども存在します。

ここを弁護士が入ることで、なるべくこのような事態が起こらないよう示談交渉していくことが大事になるわけです。

(2) 被害金額の齟齬

横領の場合、その犯行期間が長いときなど、正確な記録などが残っていないことも多く、実際の被害金額の確定が難しい場合があります。

このような時、捜査機関からの聴取や、被害者からの賠償請求などで、実際の被害金額よりも多くの金額を言われることもあります。

つまり加害者の被害金額と被害者の被害金額齟齬が生まれることがあります。

このようなことがないよう、取調べのアドバイスをし、上記(1)のようにきちんと交渉することが大事になります。

場合によっては、こちらからも証拠(犯人自身の預金通帳など)を提出し、誤った判断がされないよう尽力することになります。

4.横領事件は泉総合法律事務所へご相談下さい

泉総合法律事務所に所属する弁護士の経験としても、横領の被害者との示談活動は、金額の齟齬などかなり苦慮することも多く、慎重な弁護活動が要求されることが多いです。いち早く弁護士に相談されることをお勧めします。

横領事件は、是非とも泉総合法律事務所へご相談下さい。

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