不倫慰謝料

「婚姻破綻」があれば不倫慰謝料を減額できるって本当?

「婚姻破綻」があれば不倫慰謝料を減額できるって本当?

「夫婦仲が悪いと不倫慰謝料減額って本当ですか?」

不倫で慰謝料を請求する場合、悩むであろうことは慰謝料の金額です。相場がわからなかったり、ご自身の気持ちを考えるとできるだけ多く請求したいと思ったりすることでしょう。元の夫婦仲があまり良くなかった場合は、慰謝料額に影響するか気になるかもしれません。

また、請求された側も同じです。不倫慰謝料の請求金額を見て、ショックを受けたという方もいらっしゃるかもしれません。まさか本当に請求されるとは思っていなかった方もいるでしょう。

どちらの側であったとしても、気になるのは実際の慰謝料額です。

実は、「婚姻破綻」があると、慰謝料が認められなかったり、減額されたりすることがあります。

そこで今回は、婚姻破綻が慰謝料請求にどのように影響をするのかをお伝えいたします。

1.婚姻関係の破綻とは

婚姻関係の破綻とは、結婚生活が修復できないほど悪化していること

皆さんは、婚姻破綻という言葉をご存知ですか?

一般的には婚姻破綻と言われていますが、正しくは婚姻関係の破綻のことを指します。

婚姻関係の破綻とは、婚姻関係が修復できないほど悪化してしまい、離婚の原因となるほどの状況に陥っていることを意味します。簡単にいうと、夫婦の関係が元に戻せないほど悪化し、離婚直前の状態となっているということです。

(1) 婚姻関係の破綻と不倫慰謝料

この用語を目にするのは、主に離婚や不倫慰謝料請求のケースです。

離婚の多くは、夫婦それぞれの意思に基づき話し合いで離婚を決定しますが、どちらかが納得できない場合もあります。そんなとき、離婚裁判などでは法定離婚事由があるかどうかが問題となります。

法定離婚事由の1つとしては「婚姻を継続しがたい重大な事情がある」というものがありますが、これは婚姻関係の破綻を示しています。

また、既婚者と不倫関係を築いてしまった場合、もう一方の配偶者は、パートナーと不倫相手に対し不法行為に基づく損害賠償請求ができます。

結婚をすると、夫婦は互いに他の異性と性交渉を持ってはいけない義務が課されることになります。そして、これを破ると夫婦の婚姻共同生活の平和が害されることになるため、不法行為として損害賠償が認められるのです。

もっとも、損害賠償請求は、「婚姻関係が良好であること」が前提です。婚姻破綻と言えるほど夫婦関係が悪化していた場合には、守るべき平和な婚姻共同生活が観念できないため、不法行為自体が成立しません。

このように、不倫の損害賠償請求でも婚姻関係の破綻があれば、損害賠償請求自体ができなくなってしまうこともあるのです。

(2) 婚姻関係の破綻が認められるケース

婚姻関係の破綻があれば、不倫行為の損害賠償請求否定されます。そのため、実際にお金を支払うこともないでしょう。

しかし、夫婦関係の破綻があるかどうかは、外から見て判断し難いことも多いのが現実です。そのため、完全に破綻していて慰謝料請求が否定されるのは限られた事例といえます。

具体的には、①離婚調停中、②離婚協議中、③家庭内暴力がある、などのケースです。

①離婚調停中

離婚調停の最中、不倫行為が始まった場合は婚姻関係破綻後の行為として認められやすいでしょう。離婚調停中なら、夫婦の離婚への意思はあり、夫婦関係は修復できない状態といえるからです。

もっとも、不倫された側の配偶者に離婚の意思がない場合は、完全に破綻しているとは言えません。

しかし、離婚調停中で、双方に離婚の意思があると言える場合には、婚姻破綻があると考えてよいでしょう。

②離婚協議中

調停など裁判を通していなくとも、離婚協議を夫婦間で開始している場合は、婚姻関係の破綻があるといえます。

この場合も、保護すべき婚姻共同生活がないため、不倫行為があったとしても損害賠償請求は否定される可能性が高いでしょう。

もっとも、片方に離婚の意思がない場合は、離婚調停と同様に完全な破綻があるとはいえません。

③家庭内暴力がある

DVなどの家庭内暴力がある場合も、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いといえます。

このようなケースの場合は、損害賠償請求も否定される可能性があります。

このように、婚姻破綻が認められるのは外からみても明らかな場合に限られています。同居している場合、完全な破綻を認めるのは難しいケースもあるでしょう。

2.不倫慰謝料の減額の可能性

次に、不倫慰謝料の相場をご説明します。その後、減額の可能性について見ていきましょう。

(1) 不倫慰謝料の相場

皆さんは、不倫慰謝料の相場がどれくらいかご存知ですか?

一般的には、「50~300万円が相場」といわれています。しかし、実際のところ「必ずこれくらい」という定まった金額はありません。

というのも、不倫問題では、実際の事情から総合的に判断し慰謝料の金額を決めていくからです。

交渉しなかった場合は、請求した側の言い値が支払わなければいけない金額となることもあります。

不倫行為に対する慰謝料は、相手方の婚姻関係を壊したことや傷つけたこと、そして精神的な苦痛に対する償い金です。場合によっては、相場よりも高い慰謝料を請求することもあります。

もっとも、金額を判断する際に考慮すべき事項というのはある程度きまっています。具体的には、不倫期間・回数、不倫内容、婚姻関係の長さ、子どもの有無、経済的事情などが考慮事項となります。

不倫期間が長ければ慰謝料は増額される傾向にありますし、子どもがいる方がいない場合よりも不倫行為は重く受け止められています。支払う側の経済状態も大きく影響するでしょう。

このように、不倫慰謝料はさまざまな事情を考慮して、金額が定まります。

(2) 破綻の程度によって減額がありうる

「夫婦仲が悪いという程度でも、慰謝料額に影響するの?」

婚姻関係の完全な破綻がない場合でも、「夫婦仲があまりよくない」というケースもあるでしょう。

まず、完全な破綻がある場合は、慰謝料請求自体が否定されますので、慰謝料はゼロです。しかし、先ほどお話しした通り、離婚間近であるなどの事情がない限り「完全破綻」は認められにくいと考えます。そのため、夫婦関係の悪化がある程度の場合は、その程度に応じて減額があると理解しておくとよいでしょう。

もっとも、「ケンカの最中だった」などの一時的な事情であれば問題とはなりません。

婚姻生活を送っていると、誰しも一時的に仲が悪くなったりすることは経験します。このような事情があっても、大きくみて婚姻関係の破綻といえるほど決定的な悪化事情がなければ問題ないのです。

他方、長期的に婚姻関係が悪化していた事情があれば、慰謝料額は減額される可能性があります。

このように、夫婦関係の悪化で慰謝料額が減額されることはありえます。

3.慰謝料請求の減額が認められるケース

では、具体的にどのような事情があれば不倫慰謝料の減額の可能性があるのでしょうか。

(1) 長期的な別居

離婚を前提として別居をはじめているなどの事情がある場合は、不倫慰謝料の減額の可能性はあります。

別居を始めたばかりで不倫行為が起きた場合よりも、長期的な別居がある場合の方が、不倫慰謝料の減額の程度は大きくなる可能性は高いでしょう。婚姻関係が悪化している事情として、長期的な別居は損害賠償額に影響します。

もっとも、別居の理由が転勤など夫婦関係の悪化を理由としない場合は、減額の事情とはなりません。あくまでも、夫婦関係の悪化から別居を必要とした場合に限られます。

(2) 寝室が別・日常の会話もない

同居している場合でも、夫婦関係がよくない方向に向かうときはあるでしょう。

ささいなケンカなどは問題ありませんが、「家にいても全く話をしない」という事情がある場合は、慰謝料減額の事情として働くことがあります。日常的な会話がないということは、完全に夫婦関係が壊れたとはいえないものの、相当程度の悪化を客観的に理解できます。

これ以外でも、寝室を別にしている、生計も完全に別という場合は、夫婦としての共同生活が大きく損なわれている事情として考えることができます。このような事情が長期に及べば減額が認められることはあります。

(3) 既婚者が「破綻している」と言っていた場合

不倫行為を行う際、「相手の夫婦仲がうまくいっているとは知らなかった」というケースがよくあります。

「離婚の話をしている」、「配偶者とは話をしていない」など夫婦仲の悪化を連想させるような言葉を用いて不倫行為に及ぶ方は少なくありません。

では、「離婚する」、「婚姻関係は破綻している」という言葉を不倫相手が信じていた場合は、慰謝料の減額は認められるのでしょうか。

まず、原則として慰謝料の減額はありません。相手の嘘を信じてしまったこと自体に過失があると考えられてしまい、裁判でも減額は認められないとの判決が出たケースがあります。実際に離婚していない場合は、相手の言葉を鵜呑みにしてはいけないということです。

もっとも、内容によっては減額が認められるケースもあります。実際の状況などを考慮した上で、不倫相手が既婚者の主張を信じてしまったことも仕方ないといえるような客観的事情が必要です。

具体的には、長期間の不仲を聞かされていたこと、(不倫行為をした)既婚者が病気を患っていたことに対し同情していたこと等を理由に、多少の減額が認められた事例があります。

実際に慰謝料が減額されるかどうかは、事情を聞いてみないことにはわかりませんが、ほとんどのケースでは難しいと考えるべきです。

このように、例外事例を含め、不倫慰謝料の減額が認められることもあります。実際の慰謝料額が気になる場合は、専門家である弁護士にご相談ください。

4.婚姻破綻の可能性がある場合は弁護士にご相談を

婚姻関係の破綻が認められると、不倫の損害賠償請求は難しくなります。

ただし、婚姻関係の完全な破綻が認められるのは離婚調停中など、離婚にかなり近づいた状態のときに限られます。夫婦関係の多少の悪化があったという程度では、あっても減額にとどまるでしょう。

不倫の損害賠償請求についてお悩みの方は、ぜひ一度、泉総合法律事務所にご相談ください。実際のご事情をお聞きして、慰謝料の相場をお伝えしどのような対処をすればいいかをご検討していただければと思います。

泉総合法律事務所では、離婚や不倫慰謝料に関するご相談も数多くいただいております。豊富な実績と知識から、スピーディーに問題を解決いたします。どうぞお気軽にご相談ください。

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