法人破産(会社破産)の要件|破産できない場合はどうすればいい?
会社の業績が悪化し回復の見込みがないとき、経営者であれば破産を検討することでしょう。
しかし、会社は自分ひとりのものではないので、破産すれば関係者に多大な影響を与えます。
そのため、法人破産は破産法によって詳細にルールが規定され、要件を満たせないとき、破産はできないのです。
法人(会社)破産できないのは、一体どのようなときなのでしょうか?
1.破産手続きの開始原因がない
会社が破産するときには、破産開始できる原因が存在することが条件です。
破産申し立てをすると、裁判所は破産開始原因の有無を調査します。
開始原因があると判断されれば手続きが開始されますが、原因がない場合には破産手続きはできません。
破産手続きの開始原因は「支払不能」と「債務超過」の2つです。
(1) 支払不能
破産手続開始原因の「支払不能」は漠然とした状況を指す言葉ではなく、以下の3つの条件に当てはまるときに支払不能と判断されます。
①支払能力を欠いている
支払不能と判断されるには、支払能力がないことが条件です。
ここで言う支払能力とは、債務者本人の経済的な力量のことで、財産以外にも信用、労力、技能等も含まれます。
仮に財産がない場合でも、労働によって弁済できる場合は問題になりません。
また、財産があっても、換価できないものであれば支払いに充当することができないので、支払能力がないと判断されます。
②弁済期にある債務を返済できない
支払期限がきている債務を返済できないときも、支払不能と判断されます。
将来的に支払えそうもなくても、現在はまだ弁済できているという場合は、支払不能とは判断されません。
また、弁済しないことに正当な理由がある場合も、支払不能には該当しません。
③一般的かつ継続的に返済できない
支払い不能と認められるには、一般的かつ継続的に返済できないことも条件です。
ここでいう「一般的に弁済でいない」とは、資力の不足により、全体的な弁済ができないということを意味します。
例えば、一部の債権者に弁済できたとしても、資金不足のために、他の債権者への返済ができない場合は「一般的に弁済できない状態」と言えます。
反対に、弁済できなかったとしても、資金力が問題でない場合は該当しません。
また、弁済は継続的に行うことも条件なので、今月は支払えるが、来月からは無理、という場合は支払い不能に当たります。
逆に突発的な状況で、今月だけは払えないが来月からは通常通り支払える、というときには継続的に弁済できない状況には当たりません。
④支払不能が客観的状態であること
支払不能は債務者本人ができないと思い込んでいるだけでは成立しません。
客観的に見て、支払できる状態であれば、支払不能にはならないのです。
しかし、本当に支払不能であるのかどうかは外部からは分かりにくいので、客観的には支払停止の時点で「支払不能」と推定されることになります。
(2) 債務超過
債務超過とは、会社の負債が資産を超え、自社の財産をすべて売却しても返済できない状況のことです。
会社の経営状態が正常のときには、貸借対照表の純資産がプラスになっていますが、債務超過時には純資産がマイナスになります。
貸借対照表で債務超過の状態であれば、破産法でも債務超過と判断されます。
逆にいくら借金があっても、純資産がマイナスでなければ債務超過とは認められません。
債務超過は数字だけで判断できるので、その点で分かりやすいでしょう。
破産手続開始をするには、以上の要件に当てはまることが必須です。これに当たらない場合は会社破産の手続きを開始することはできません。
2.破産障害事由がある
破産手続開始原因がある場合でも、以下の破産障害事由がある場合には会社は破産をすることができません。
(1) 予納金がない
破産をするときには、弁護士費用の他に裁判所に納める費用も必要で、これを「予納金」と言います。
自己破産の予納金は、財産のない人が個人破産をするときには2万円程度で、財産がある場合でも20万円程度で手続きをすることが可能です。
しかし、会社の場合は通常管財事件として扱われるので、予納金は高額になります。
一般的に管財事件の予納金は負債額が大きくなるほど高額になります。東京地裁が定めている負債額に対する予納金は以下の通りです。
負債額に対する予納金
- 5,000万円未満…50万円
- 5,000万円~1億円未満…80万円
- 1億円~5億円未満…150万円
- 5億円~10億円未満…250万円
- 10億円~50億円未満…400万円
- 50億円~100億円未満…500万円
- 100億円以上…700万円
会社が破産するときには基本的に上記の予納金を納めなければ破産はできません。
しかし、実際の予納金の額は、債権者の数や事件の内容によって裁判所の裁量で決められるので、必ずしも上記の金額がなければ手続きができないということではありません。
予納金の額はあくまでも参考程度にとらえ、費用面で心配がある場合は、弁護士など専門家に相談をすることをおすすめします。
(2) 不当・不誠実な目的による破産申し立て
会社経営を誠実に行ってきたものの、努力の末に破産申し立てをすることになった…ということはあり、それは仕方のないことです。
しかし、そうではなく、不当・不誠実な目的で破産申し立てをする場合は、破産障害事由に当たり、破産が認められることはありません。
不当・不誠実な目的の申立の代表的な例は計画倒産です。会社が倒産することを前提に、意図的に放漫経営をしていたと判断された場合は破産は認められません。
また、債権者に対する嫌がらせや強迫をするために申し立てをした場合も不当・不誠実と判断されます。
ただし、実際には業績を回復させようとギリギリまで融資を受けたり、新規事業を立ち上げたりしたことが裏目に出た結果破産に至るケースが大半です。
この場合、結果的に計画倒産と似たような状態にはなりますが、少なくとも不当・不誠実と判断されることはありません。
3.まとめ
会社は破産開始原因がない場合=「支払不能」と「債務超過」に当たらない場合は、破産の申立をすることができません。
支払い不能については、債務者が払えないと思っているだけでなく、客観的に支払い能力がないと判断できる状況であることが条件です。
また、仮に破産開始原因があったとしても、破産障害事由がある場合も破産はできません。
破産障害事由は予納金の未納と不当・不誠実な目的での破産申し立てです。予納金は負債額が大きくなるほど高額になる傾向にありますが、実際の金額は裁判所の裁量で決まります。
また、計画倒産や債権者への嫌がらせなどのために破産手続きをする場合、破産障害事由に当たるので認められることはないでしょう。
それでも業績が回復しなければ破産もやむを得ないのですが、破産をするつもりでいて、いざ手続きを始めたらできなかった…ということになると一大事です。
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